振替休日と代休をめぐる“月跨ぎ給与計算の落とし穴”── 休日出勤の支払いはいつ必要?控除はいつ発生?**

振替休日(振休)や代休は、多くの企業で運用されている制度です。
概念としては理解していても、「月をまたぐケースの給与計算」 になると、一気に難易度が上がります。

実際に、私のところにも、

  • 休日出勤の支払いタイミングが正しいか不安
  • 振休・代休を翌月に取らせたら控除処理が合わない
  • 振休前提で割増だけ支給してきたが正しいのか
  • 勤怠と給与の締めがずれて迷子になる

といった相談が増えています。

この記事では、実務で最もズレが起きやすい“月跨ぎ”のケースを中心 に、
振休・代休の本質と給与計算のポイントを整理します。


1.まず概念整理:振休と代休の違いは「事前か・事後か」

振休と代休は似ていますが、制度の趣旨がまったく異なります。

■ 振替休日(振休)

事前に「休日と労働日を入れ替える」制度です。
事前の特定が肝で、書面がなくても、

  • 勤怠システムの事前申請・承認ログ
  • メールやチャットの事前通知

など、事前であることが客観的に残っていれば成立 します。

この場合、入れ替え後の休日は「通常の労働日」として扱われます。


■ 代休

休日に働いたあと、その埋め合わせとして休暇を与える制度です。
代休は “休日労働そのものは消えない” ため、後述の割増計算が必要になります。


2.給与計算:ノーワーク・ノーペイは共通。違うのは“働いた日の割増率”

振休も代休も、休んだ日の賃金は発生しないため、
どちらも ノーワーク・ノーペイ という点では同じです。

違いが出るのは、休日に働いた日の扱い です。

■ 振休

・振休が成立していれば、その日は通常の労働日扱い
・週40時間以内なら追加の割増なし(100%)
・週40時間を超えた部分のみ125%(時間外割増)

■ 代休

・休日に働いた事実は残る
・法定休日であれば 135%の割増支給が必ず必要

給与計算の世界では、
振休=125%の世界、代休=135%の世界
と整理すると理解しやすいです。


**3.実務で“ズレが起きやすい”ポイント

── 特に月跨ぎは事故の温床です**

制度の理解よりも、「給与計算の締め」と「休日出勤の支払い・控除」がずれることで事故が起きます。

(1)休日出勤した月には、100%+割増の支払いが必要

労基法24条(賃金全額払いの原則)により、
休日に働いた分は、その月の給与で全額支払う必要があります。

例)1月20日に休日出勤
→ 1月分給与で「1日分の基礎賃金+休日割増(または時間外)」を支払う。


(2)振休・代休を翌月に取得すると、控除は翌月に発生

例)
・1/20に休日出勤
・2/5に代休/振休を取得

→ 1/20の賃金は1月分で支払い
→ 2/5は勤務していないため 2月分で1日分の控除(ノーワーク・ノーペイ)

支給:1月
控除:2月

このように、支給と控除のタイミングがズレます。
実務で混乱が多いのはまさにここです。


(3)誤りが多い実務:休日出勤が“振休取得前提”で処理される

実務では次のような誤りが散見されます。

「振休を取る予定だから、休日出勤分は割増(25%・35%)だけ支給しておこう」

これは 完全に誤り で、賃金全額払いの原則に反します。

本来は:
休日に働いた瞬間に「100%+割増」支払義務が発生
(振休を取るかどうかは関係ない)

翌月に振休を取った場合は、
その月の給与で“控除”を行うことで調整します。


(4)なぜ月跨ぎでズレが起きるのか?

理由は大きく3つあります。

● 給与計算と勤怠管理が別々に運用されている

振休・代休の処理が勤怠担当と給与担当で分断されやすい。

● システム設定が制度と噛み合っていない

「翌月控除」の仕組みがそもそもない設定のまま運用している企業も少なくない。

● 現場判断で“108%ルール”や“割増分だけ支給”などの独自運用が紛れ込みやすい

現場が善意で調整しても、法的には不適切なケースが多い。


4.月跨ぎ処理を安全にするためのポイント

  • 休日出勤した日は、当月の給与で必ず100%+割増支給
  • 翌月に振休・代休を取った場合は、翌月に控除処理
  • 「振休か代休か」を勤怠上で明確に区別
  • 就業規則・勤怠システム・給与計算の処理ルールを整合
  • 振休は必ず“事前特定が記録として残る”状態にしておく(ログが最強)

この5つを整理するだけで運用は劇的に安定します。


**【まとめ】

月跨ぎの処理は制度より“運用設計”が重要です**

振休と代休は概念としてはシンプルですが、
給与計算に落とすと「締め日」「控除月」「割増率」といった要素が絡み、
実務ではズレが起きやすい領域です。

とくに 月跨ぎの支給・控除の扱い は、
多くの企業が誤解しているポイントであり、労基法上も注意が必要です。

自社の運用に不安がある場合や、
勤怠と給与計算の連動を見直したい場合には、
状況に合わせた最適なフローをご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。

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佐怒賀 奨吾

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