勤怠管理のミスが招く労務リスクとは?
「勤怠管理」は、単なる業務の一部ではなく、企業の信頼と法令遵守を守るための重要な管理業務です。
打刻漏れや残業時間の記録ミスが、思わぬ労務トラブルに発展することも――。
本記事では、勤怠管理のミスが引き起こす労務リスクと、その予防策について解説します。
1. 未払い残業代によるトラブル
最も多いのが、残業時間の記録漏れや計算ミスによる未払い残業代の発生です。
従業員が実際に働いた時間が正しく記録されていない場合、企業は意図せずして労働基準法違反となり、是正勧告や損害賠償請求を受ける可能性があります。
事例:
精密測定機器の販売を行う企業では、出退勤時刻の記録が不十分であったにもかかわらず、1日平均約3時間30分の時間外勤務が存在していたと裁判所に認定されました
その結果、約245万円の損害賠償が命じられ、未払い残業代の支払いに加えて、民法上の不法行為責任も認定されました。
2. 労働基準監督署からの是正勧告
勤怠管理の不備は、労働基準監督署の調査対象となることがあります。
特に、36協定で定めた時間外労働の上限を超えているにもかかわらず、記録が曖昧な場合は、是正勧告や企業名の公表につながることも。
ポイント:
・36協定の内容と実際の勤怠記録が一致しているか
・月60時間超の残業に対する割増賃金が適切に支払われているか
3. 有給休暇の取得義務違反
2019年の法改正により、年5日の有給休暇取得が義務化されました。
勤怠管理が不十分だと、有給取得状況の把握ができず、義務違反となるリスクがあります。
対応策:
・有給管理簿の作成
・勤怠システムとの連携による取得状況の可視化
4. 勤怠管理ミスの予防策
労務リスクを回避するためには、以下のような対策が有効です。
- クラウド型勤怠管理システムの導入
- 打刻漏れ防止、リアルタイムでの勤怠把握が可能
- 定期的な勤怠データのチェック体制の構築
- 月次でのチェックリスト運用や、管理者によるレビュー
- 従業員への勤怠ルールの周知徹底
- 勤怠ルールを明文化し、研修などで定期的に共有
まとめ
勤怠管理のミスは、企業にとって金銭的・信用的な損失を招く可能性があります。
「うっかり」や「忙しさによる見落とし」が、重大な労務リスクにつながらないよう、正確で透明性のある勤怠管理体制の構築が求められます。
社会保険労務士法人HRデザインでは、勤怠管理の見直しやシステム導入支援、労務リスクの診断などを通じて、企業の健全な労務運営をサポートしています。
お気軽にご相談ください。
「うちの勤怠管理、大丈夫かな?」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
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